Lesson5-1 茶葉が出来るまで 茶園の1年

すぐには収穫できない

茶葉は永年作物と言われるほど、1度植えれば30~50年は収穫・栽培が出来るくらい息の長い作物なのです。ですが植えてすぐに収穫できるわけではなく、苗木の状態からその土地の土や水に慣れさせる必要もあります。さらにそれぞれの茶園の違いを生み出すためにも肥料を変えたり雑草をとったり、生え過ぎた枝を切り分けたりとたくさんの手間がかかります。

そんな世話を根気強く続け、最初の収穫を迎えるのに4年はかかります。さらに収穫量が安定するにはもっと先の7~10年はかかると考えましょう。もちろん、今まで通り丁寧な世話をしたうえでの話です。

もちろん、作業の機械化や品種改良によって味や収穫量の安定は図れるようになったため元来の手間はだいぶ省かれましたが、新しい肥料の組み合わせや施設運用の費用など頭を悩ませる種が減ったわけではありません。

1年のサイクル

茶の1年

約10年の年月を乗り越え、安定した量が収穫できるようになった茶樹を例に1年をなぞって行きましょう。

12~2月:休眠(きゅうみん)

寒い冬の時期になると茶樹の育成が停止して、休眠状態となります。そうなると茶樹自身の耐寒性が高まりますが、それでも寒さに負けないよう茶園によっては根元に敷草を敷いて地温と水分の保持を行います。

2月~:春の肥料

春の温かさによって休眠していた茶樹が目を覚まし、新しい根を出し始めます。この成長が激しい時期を狙って窒素肥料を補給し、日本茶特有のうま味をさらに引き立たせます。

3月~:防霜(ぼうそう)ファン

茶園にはハネが扇風機のようになっている小さめの風車のような物、ファンが備え付けられています。これは空気の交換を行うために設けられているのです。

春に入ってきて温かくなったとはいえ、まだ寒い空気も流れてくるこの時期には空気が分かれる状態になります。温かい空気は上昇し、冷たい空気は地表に残るので茶樹は冷たい空気に当てられることとなるのです。

そうすると朝露などが凍り付いて茶葉の新芽に霜が付いてしまう恐れもあり、成長を妨げてしまいます。それを防ぐためにファンで温かい空気を下の方へと送り、霜の被害をなくそうという動きです。

3~4月:萌芽(ほうが)

寒さから新芽を守っていた包葉(ほうよう)が開き、芽が伸び始めます。ですが時期によってはまだ寒い天気が続き、霜の被害を受けやすいのでファンを稼働させるなどの工夫が必要になります。

4月下旬~5月:一番茶の摘採

一番茶、つまり1年で最初に行う茶葉の摘み取りが行われます。1年で最も上質な煎茶用茶葉が摘まれ、特に初期の高品質な茶葉は機械ではなく手で摘み取るので最も忙しい時期とも言われています。

5月下旬~7月:整枝(せいし)・防除

一番茶の摘採後、二番茶の栽培を行うために肥料を与えたり同時期に芽を出すように、茶樹の表面を刈り揃える整枝を行います。さらに虫が湧きやすい夏に備えて病害虫の防除を行います。

6月下旬~8月:二~三番茶の摘採

一番茶の摘採から約50日後、二番茶の摘採を行います。さらに地域によっては三番茶や番茶の摘採も行われます。

9~10月

この時期は茶園によって変わってきますが、主に土壌の改良を行っていたり冬支度に向けて秋のうちに肥料を与えたり防除などをして栄養を蓄えさせておきます。

10月中旬:秋整枝

翌年の一番茶の萌芽を揃えるために、茶樹の表面を刈りならします。地域によってはこの時に出てきた茶葉を再利用して秋冬番茶として製造する所もあります。