品種の違い
お茶の葉を実らせる茶樹(ちゃじゅ)は従来、実を結んだ種を畑にまいて、そこから出た芽を育てていました。ですがこの方法の場合、同じ茶園にあったとしても木によっては摘採時期がそれぞれの木で違っていたり、お茶の品質がまばらだったりと均一な質と量の栽培が困難でした。
この問題をどうにか解決しようとし、優れた性質の茶樹を選んで育成する試みが行われました。これによって明治時代末頃に誕生したのが『やぶきた』です。
この『やぶきた』の登場によって、今まで在来種の茶樹で栽培されていた茶園でも品種を用いた方法へと急速に変化して行き、全国に広まって行きました。この急速な波によってお茶の品質や収穫量は飛躍的に向上し、高い水準で安定することができました。
現在でもこの茶樹は人気を占めていて、日本の茶園の75%以上が『やぶきた』で栽培されています。
注目品種
高い水準で品質と収穫量が得られるようになったことで、一見成功したかのように見えますが、全てが良い方向へと流れるわけではありません。『やぶきた』が全国に広まったことで様々な弊害も生まれて来たのです。
例えばどこも同じ品種を使っているという事で別の茶園でも大きな差が生まれにくくなることです。その土地の水や高度など、環境によって多少の味は変わるかもしれません。ですが中には同じような環境で育てて味も似たり寄ったりな物もあり、同じ茶園の茶葉を再度購入するお客様、リピーターの方が付きにくくなってしまいます。
また、どこも摘採時期が同じという事もあって一定時期に多忙になり、労働力不足などの問題も上がっています。
これらの問題を解決する為に、それぞれの茶園で独自の品種開発を行うようにしました。摘採時期や香味、色、形状の多様化、耐寒、耐病など、様々なニーズに応えた研究が重ねられ、各々の茶園で特徴を持つ茶葉が生まれてきました。
その一例が下記の茶葉になります。
やぶきた
煎茶の代表品種とも呼ばれる茶葉です。浅蒸しから深蒸しまで、製法や産地に関わらずどこでも栽培が出来て多くの人に愛されているバランスの良い茶葉です。ここから様々なタイプに変化して行き、茶園の特徴を表すきっかけにもなっています。
さえみどり
近年、栽培面積が増えている品種です。深蒸し茶や水出し煎茶にすることで香りや甘味などが特徴的なお茶になります。
かなやみどり
この茶葉は独特のミルキーな香りが特徴的で、静岡県を中心に栽培がおこなわれています。土壌を選ぶので産地は限定的になってきますが、その欠点をカバーするように収穫量が多い品種になっています。
