日本茶は現代において一般的な飲み物になっていますが、前のページで少し触れたように将軍などの位の高い人たちがお茶をたしなむことが普通で、一般市民が簡単に飲めるようなものではありませんでした。

どのような経緯をたどって今の状態になったのか、一つずつ紐解いて説明していきましょう。

初めのお茶

日本茶は元々中国へと渡っていた遣唐使によって運ばれたことから始まります。遣唐使の何人かによっても運び込まれたお茶の種はそれぞれのお寺などで栽培され、徐々に広まって行きました。

805年に唐から帰って来た最澄という僧が日吉茶園にお茶の種をまいたり、806年に同じく僧の空海が中国からお茶の種を持ち帰った、などの記録がありますが、『お茶』の言葉が登場する日本最古の記録は815年に作成された「日本後記」なので、覚えておきましょう。

この時に主流だったお茶が蒸した茶葉を臼でつき乾燥させて固めた餅茶（へいちゃ）になり、鎌倉時代付近まで進むと現代でも馴染みがある抹茶（宋から伝わった碾茶を粉末状にしたもの）が出て来ます。

四畳半の茶の湯

碾茶が広まるようになってお茶の効能について書かれた日本書紀の茶書「喫茶養生記」が誕生したり、京都で茶の種がまかれて宇治茶の始まりが行われたりと、様々な出来事が起こりましたが、現在の茶道に繋がる大きな変化が訪れました。

それが1486年、『四畳半の茶の湯』の誕生です。

この茶道の土台を作った村田珠光（むらたじゅこう）の考えを引き継いだ千利休は50代の頃に織田信長の茶頭（さどう）を務めました。なお、茶頭とは将軍家や諸大名に仕えており、茶の湯の準備や美術品の鑑定、購入を任されていました。その後も豊臣秀吉の茶頭として名を挙げ、有名になって行きます。

千利休が目指した茶道の作法は完成し、庶民の間でもその作法が広まって行きました。ここでやっと、日本茶が一般市民に受け入れられたのです。

この侘茶の精神は「三千家」として茶道界の代表であり、今もなお伝えられています。

茶の種類の誕生

これまで日本茶と言えば碾茶、抹茶が主流でしたが、1654年に釜炒り茶が誕生し、煎茶、玉露、蒸し茶など様々な種類のお茶が時代とともに生まれて来ました。

その時代の最中、明治維新を経てお茶の市場は近代、現代へと近付いて行きます。明治維新の時には日本茶を本格的に輸出するようになり、1900年代に入る頃にはお茶の製法にも機械が導入されるようになってきました。

今では製法だけでなく、刈り取りや茶葉の状態を調べる事でも機械を使用する例は珍しくありません。

時代が変わる事で生産体制の変革や消費量の増加が起こり、コンビニや自動販売機ですぐにお茶が買えるような世の中へと変わって行ったのです。